– 高校山岳部で鍛えた山男部長 –
高校(都立西高校)時代に山三昧の高校生活を送った加藤彰彦(かとう あきひこ)先生が、第15代の山岳部長に就任する。加藤先生は早稲田大学、同大学院を卒業され、3年ほど銀行に務めた後、本学政治経済学部の教授となり、人口、家族、社会構造の比較社会学的研究を専攻している。
加藤先生は中学3年のとき、植村直己の著書『青春を山に賭けて』や『極北に駆ける』などを読み、登山を始めるきっかけになったという。また、山以外でも植村の影響を受け、大学時代にバックパッカーとして延べ1年間、アメリカやヨーロッパ、アジアなどを独り旅し、様々な体験を積んだ。出身大学は違うが、植村直己との深い縁を感じる。
加藤先生が部長に就任して驚いたのは、明大山岳部が植村が活躍していたころの登山スタイルを継承していることだった。すなわち、夏山は重荷を背負っての長期縦走、冬山は極地法による登山を続ける山岳部に感銘を受けた先生は、一見時代遅れに見えるかもしれないが、これこそ自然の猛威に対する知識と合理的な判断力、そして強靭な精神を育む活動である、と述べている。
山岳部は依然として部員数の減少に悩んでいる。加藤先生は着任早々の挨拶の中で―「今後はこうした人材(MACが輩出してきたアルピニスト、あるいは広く山の文化を担う人材)の育成をより積極的に前面に打ち出すことで、体育会山岳部の存在意義を学内外に示せれば、と考えております。そのためには、スポーツ入試の学生に加えて、一般入試の学生たちを継続的にリクルートすることが課題になりますが、彼らに山岳部活動の意義を伝える際に私の経験が役立てば、と思っています」と抱負を語ってくれた。
加藤部長が就任した山岳部は、依然として部員少数の域を脱せないままである。慢性化する部員不足の課題に直面した部長は、現在の状況変化に適応できないMACに問題提起する。一つに、現在の学生気質に対する認識が欠けていること。また、偏差値が上がった本学の変化に気付いていないことを挙げた。今や学生は、大学での授業への取り組みが必須となり、これまで以上に学業と部活動の両立への配慮が不可欠になっているという。
そのため、山岳部が持続的に部員を確保していくには、部活動のあり方をもっと幅広く柔軟に捉え、さらに長期合宿、冬山登山、周年海外遠征を維持するには、試行錯誤と工夫が必要だと問い掛けている。
今や団塊世代の時代と違いバンカラ風の校風は消え、優等生が集まる都会的な大学に生まれ変わり、そのため昭和時代に構築された合宿形態の継続は難しくなっている。一般学生に山岳部をどうアピールすべきか、待ったなしの問題が大きく立ちはだかっている。時代が「平成」から「令和」に変わる年に就かれた加藤部長は、創部百周年後のMACのあり方、すなわち21世紀における新MACを創出するため、学生、監督、コーチと一丸となって取り組んでいる。