特別企画展の案内:「植村直己・わが青春の山岳部」

 海外登山隊に同行した学術調査隊の記録

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 我が山岳部の戦後の海外遠征は、学術調査と一心同体の形でスタートを切るが、そこには山岳部長先生との深い結び付きがあった。マッキンリーとゴジュンバ・カンの遠征では、第12代山岳部長の渡辺操先生の尽力が何よりも大きかった。その後、外国への渡航が自由化されると、“学術調査”の冠は消えても、明大登山隊と学術調査の関係は連携しながら続いていく。とりわけ地理学専門の第14代山岳部長・小疇尚先生が就任すると、高山地形や寒冷地形を調査する目的で海外遠征隊に学術隊(班)が何度となく同行、ヒマラヤでの学術調査に励んだ。

 遠征隊と連携して実施された学術調査は、登山記録から見ると枠外に置かれがちだが、未知の領域へのフィールドワークと捉えれば、なんら遜色のない登山活動である。ここに様々な研究や調査に取り組んだ学術調査隊(班)の足跡をたどる。

期間:1960(昭和35)年 3 月 〜 7 月

目的:日本初期の先史文化とアラスカ地域の先史文化との関連を明らかにし、現存するエスキモーおよびインディアンを包含する原住民文化の起源を探り、その実態を解明する。また、これらの諸文化を育てたアラスカ地域の生活環境とその変化を究明するため、マッキンリー山地の氷河地形、山地地形、北極海およびベーリング海沿岸地形、並びに土地利用に関する調査研究を行う。

期間:1965(昭和40)年 2 月 〜 3 月

目的:ネパール地域経済の学術調査関係の資料収集と今後の調査準備。

期間:1980(昭和55)年12月 〜 81(同56)年 1 月

目的:エベレストのベースキャンプを中心に、冬季における雪氷・氷河地形、高所医学および気象の調査。併せてエベレストの氷サンプルを採取し、日本に移送する。

期間:1991(平成 3 )年 4 月 〜 5 月

目的:エベレストのベースキャンプを中心に、冬季における雪氷・氷河地形、高所医学および気象の調査。併せてエベレストの氷サンプルを採取し、日本に移送する。

期間:2001(平成13)年 7 月 〜 8 月

目的:フンザ周辺の生活、農業の変容を捉えるとともに、自然環境の変化を調査し、地球温暖化・地球環境問題の資料を見出す。

期間:夏隊=2002(平成14)年 8 月, 秋隊=2002(平成14)年10月 〜 11月

目的:クーンブ・ヒマール地域の景観構造とエコ・ツーリズム調査、およびアンナプルナ周辺地域の自然と社会の変貌調査。

期間:春隊=2003(平成15)年 4 月 〜 5 月, 夏隊=2003(平成15)年 7 月 〜 8 月

目的:春隊=アンナプルナ山域で地形と氷河の調査。夏隊=アンナプルナ周辺地域の地形、植生、気候、集落、農業、観光業など地域社会の変貌調査。

 残念ながらアンナプルナⅠ峰を最後に、学術隊の足跡は途絶えてしまう。確かに海外登山の形態が大きく変わり、学術隊(班)と連携しにくくなったのも事実である。しかし、“大学山岳部”という利点を活かすならば、学内の様々な専門分野とタイアップし、登山と学術調査のコラボという、新たな道を模索してもいいのではないかと思える。

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